池上年の世界
先日、愛知県岡崎市にある岡崎石造美術研究所の創設者=池上年氏の設計・制作された石造物を見て回る機会を得ました。池上氏は明治23年生まれ。石造美術研究者として、優れた石造品の実測模写・復元をし、伝統を明らかにすると共に、独自の石造美術の設計・制作に尽力されてきた方で、東京の赤坂離宮にある御苑形石灯籠をはじめ数多くの著名作品を残していらっしゃいます。
今回は岡崎市ならびに幸田町、西尾市、碧南市、刈谷市にある作品(大正13年~昭和51年の作品)を見てきましたが、細部まで妥協を許さない徹底した探究心、石という素材を活かし、石でしかなし得ないような見事な作風・表現力に、同行いただいたベテラン石工さんも感嘆の声をあげられていました。
池上氏の作品が掲載されている『石造研究 池上年の世界』に次のような一節があります。
石は 硬いにかぎる
硬い石を使って
太い指で 押えたような
石の柔らかさが
内側から出るようで
なければならない
素晴らしい石造作品を目にし、改めて“石の持つ力”を感じた、とても有意義な機会となりました!